消防設備士とは?難易度・合格率と資格取得のメリット
万が一の火災などの災害時、被害を最小限に食い止めるために設置されているのが防火設備です。
防火設備の工事や点検を行なうために必要な資格が消防設備士です。消防設備士には甲種と乙種の免許があり、それぞれで取り扱える設備や、行なえる業務が異なります。
消防設備士の資格をこれから取得したい人のために、消防設備士の資格の概要から、甲種と乙種の違いについて解説します。
さらに資格を取得した際のメリット、気になる年収や仕事内容などについても具体的に紹介しました。
消防設備士資格を転職や就職のために活かしたい人は、ぜひ参考にしてください。
火災や防災に関する事項を取り決めた法律が消防法です。消防法第17条では、ホテル、病院、福祉施設、地下街などのの防火対象物の関係者(所有者など)が消防用設備等を設置・維持することを義務付けています。
消防用設備には以下のものがあります。
- 消火設備
消火器具、屋内消火栓設備、スプリンクラー設備など - 警報設備
自動火災報知設備など - 避難設備
避難器具、誘導灯など - 消防用水
- 消火活動上必要な施設
連結送水管、排煙設備、非常コンセント設備など
この消防用設備の設置工事や点検を行なうために必要な資格が、消防設備士です。
消防設備士資格は甲種消防設備士と乙種消防設備士の2種類があり、それぞれで行なえる業務や扱える消防用設備が異なります。
乙種消防設備士資格は、1類から7類までの種類があり、取り扱える消防用設備が異なります。
なお、取り扱いできる消防設備が限定的な6類(消火器)、7類(漏電火災警報器)が設定されているのは、乙種のみです。
免許に記載されている消防用設備などの整備、点検が行なえます。
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甲種消防設備士は特類から5類までの種類があり、類で指定された消防用設備の整備、点検が行なえます。
また、特類免許(従来の消防用設備に代わって、総務大臣が当該消防用設備等と同等以上の性能があると認定した特殊消防用設備など)は特殊消防用設備の整備と点検に加えて、工事も行なえます。
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甲種消防設備士の受験資格!人気の甲種4類・甲種1類は何ができる?
甲種のみ受験資格がある
乙種は受験資格がありませんが、甲種は以下の受験資格が設けられています。
甲種特類
甲種1類から3類までのどれか1つと、甲種4類または甲種5類の3種類以上の免状の交付を受けていること。
そのほかの甲種免許
以下いずれかの条件を満たすと甲種受験資格が得られます。
- 受験する類以外の甲種免許を持っている
- 乙種消防設備士免状を取得してから、消防法17条の5の規定に基づく工事整備対象設備等の整備を2年以上経験する
- 消防用設備等の工事の補助者として、5年以上の実務経験がある
- 専門学校卒業程度検定試験の機械、電気、工業化学、土木または建築部門の試験に合格する
- 消防機関または市町村役場等の行政機関で消防用設備等に関する事務の3年以上の実務経験がある
- 理学、工学、農学または薬学の修士または博士学位を得る
- 技術士、電気工事士、第1種、第2種または第3種電気主任技術者、管工事施工管理技士1級または2級、高等学校の工業科教員免許、アマチュア無線を除く無線従事者資格免許、1級または2級建築士、1級または2級配管技能士、ガス主任技術者、給水装置工事主任技術者、給水責任技術者資格、旧消防設備士いずれかの資格または免許を取得している
など細かく指定されていますので、詳細は公式サイトでご確認ください。
消防設備士を取得すると以下3つのメリットが得られます。
- 求人の幅が広がる
- 消防設備が取り扱えるようになる
- 使命感ややりがいがある
消防設備士は、消防法でさだめられた施設の消防設備を取り扱える職種です。そのため、消防設備士資格があると就ける職種や業種の幅がひろがります。
今後も需要の高い資格であるのとともに、消防設備の取り扱いができるようになります。
普段から防災などに興味のある人、工事分野で働きたい人にもぴったりです。
また、火災のときに必要となる設備の工事や点検を行なうため、間接的に人の命を守る使命感ややりがいを持てます。
消防設備士は今後も需要が見込まれるため、将来性も高い仕事です。消防設備士資格を持つ人の求人は、月収19~50万円と幅があります。
また工事の受注状況によっては、50万円以上の月収も可能です。年収に換算すると280~900万円と地域差があり、平均年収は400~500万円ほどです。
消防設備士資格が求められる仕事は以下のものがあります。
- 消防設備の設置や点検を行なっている会社の社員
- 防災関係の商品やサービスを提供している会社の社員
- マンションやアパートなどの集合住宅の警備スタッフ
- デパートやスーパーなどの商業施設のメンテナンススタッフ
- 不動産会社など消防設備士枠での採用がある業種の社員 など
消防設備士に向いているのは以下のような人です。
- 仕事に誠実に取り組める人
- 人の命に直結しているという意識を持てる人
- 幅広い現場で働くのが苦ではない人
- 知識欲や向上心のある人
消防設備は火災時にきちんと作動してこそ本来の役割を果たします。日ごろの消防設備の工事や点検作業をひとつひとつ丁寧に、まじめに取り組める人が向いています。
また、消防設備が作動しないと、多くの犠牲者を出してしまいます。つねに人の命に直結しているという意識を持ち、点検や作業ミスをしない、故意に手抜きなどをしないのも重要です。
消防設備士はひとつの現場に腰をすえるのではなく、いろいろな施設や企業に出向いて作業をします。多くの人と関わる機会もあるので、最低限のコミュニケーションができる人が向いています。
そして消防設備は日々新しいものが開発されます。工事の方法や消防設備の取り扱い方法なども、日ごろからしっかり勉強して新しい知識を得なければいけません。
勉強が苦ではない人や、向上心のある人も向いています。
消防設備士は乙種と甲種ともに免許の種類で取り扱える消防設備が異なります。自分が就職または転職したい企業や職種に適した類の免許を取得しましょう。
また、甲種消防設備士を取得する場合は受験資格があります。
受験資格はすでに甲種免許を持っている人のほか、実務経験がある人、特定の学齢がある人も該当します。
自分が受験資格を満たしているかどうか分からない場合には、各都道府県の一般財団法人 消防試験研究センターに問い合わせをするのが確実です。
免許取得後は都道府県で定められた期間によって、新しい知識を得るための講習を受けなければいけない点にも注意が必要です。
消防設備士になるためには、資格試験を受けて合格しなければいけません。
試験は、都道府県ごとで実施日程が異なり、定められた期間内に書面または電子申請にて申し込みを行います。
また、受験する都道府県は住居があるところ、勤務地など自由に選択できます。
乙種消防設備士の試験はいずれの類も消防関係法令10問、基礎的知識5問、構造・機能・整備15問の筆記試験全30問、実技試験5問です。
また、すでにほかの類の乙種免許を取得している場合、一定の試験範囲が免除となることがあります。
乙種消防設備士の合格率は、全体で35~40%です。難易度は類によって異なり、合格率30%前後の1類、3類が高く、合格率57~58%前後の7類が低めになっています。
甲種消防設備士は取得する類によって試験が異なります。合格率は全体で30%前後です。
特に難易度の高い特類は、合格率20%前後と難関になっています。ほかの類も25~35%前後の合格率と難易度の高い資格です。
甲種特類
甲種特類の試験は、筆記試験全45問となります。
- 工事設備対象設備等の構造・機能・工事・設備15問
- 火災及び防火15問
- 消防関係法令15問
甲種1類~5類
甲種1類~5類の試験は特類と同じ全45問ですが、出題範囲が異なります。また、実技試験も7問あります。
- 消防関係法令15問
- 基礎知識10問
- 消防用設備等の構造・機能・工事・整備20問
- 実技試験7問
消防設備士は火災時の消火や避難に必要な設備の工事や点検を行なう重要な職種です。
消防設備を取り扱うからこそ、誠実に、使命感や責任感を持って仕事をすることが求められます。試験は乙種の7類をのぞき全体的に難易度が高くなっていますが、その分だけ需要が高い資格です。
将来性も高く、高収入への転職も視野に入るため、ぜひしっかり勉強して取得を目指しましょう。